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マネジメント論の巨匠、C.K. プラハラッド逝く

C.K.プラハラッド教授、急逝のニュース。世は、偉大な経営論者を失ってしまった。氏は私にとっても大きな影響を与えた人だった。

プラハラッド氏は、ゲリー・ハメル教授との共著「コアコンピテンス経営」で、80年代に、世界に大きな影響を与えた。コアコンピテンス経営は、経営論界にresource-based view(資源をベースとした見方)をもたらした。コアコンピテンス経営は、事業は切り貼りするものだとしていたアングロサクソン型経営モデルに一石を投じ、日本企業の経営の精神を見事に解き明かしたものだった。

私は前職のコンサルティング会社のロンドン事務所にて、両氏の講演を聞く機会があった。ハメル氏の講演は、滑舌がすばらしく良く、とてもエンターテイニングだった。一方のプラハラッド氏は、朴訥(ぼくとつ)とした感じで、対照的だった。

前職のコンサル会社が、両氏を顧問にしていたので、私も、普通の人よりはコアコンピテンス論に詳しくなった。そして、PFC創業当初は、コアコンピテンス論を元にしたセミナーやワークショップを随分と行わせてもらった。

前職にいたとき、プラハラッド氏の息子が、夏休みのインターン生としてやってきた。息子の東京での仮住まいが偶然に私の近所となった。そして私が息子の上司兼世話役に任命された。

息子は、大学院生で、経営と化学と日本語の3つを専門にしていた。日本では、ダブルメジャーですら珍しいのに、なんとトリプルメジャーである。驚愕した私に、息子はさらりと言ってのけた。

「企業は、3つか4つのコアコンピテンスを持ち合わせていなければ、競争に勝ち残れない。個人だって、それと同じのはず。」

こう書くと、息子はガリ勉の嫌なやつに聞こえるかもしれないが、そんなことはまったくない。超優秀だが、謙虚で真面目で人当たりがよく、同世代の若手コンサルタントともすぐ仲良くなっていた。

息子には、日本の電機メーカーのコアコンピテンス分析を命じた。2ヵ月後には、素晴らしいレポートができあがった。(それも日本語で)息子は、ときどき父親に電話して指導を受けていたようだった。したがって、監督者とはいえ、私の出る幕はなかった。
当時の私は未熟だったので、レポートの出来にひたすら感嘆して終わってしまった。
今の私なら、レポートを書籍として出版することを勧め、その手はずを整えてあげただろう。もったいないことをしてしまった。

その後、2004年に出たプラハラッド教授が出した「The Fortune at the Bottom of the Pyramid(邦訳名:ネクスト・マーケット)」は衝撃だった。世界経済の見方を変えてくれた。この本の内容は、弊社が秋に始めるGIAリーダープログラムの基盤となっている。

プラハラッド教授のご冥福をお祈りしつつ、彼が訴えていたことの一片だけでも引き継いでいこうと思う。
by peoplefocus | 2010-04-19 21:54
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